10/13/2008

ドゥンス・スコトゥスのお化け

今日(日曜日)から第一週。授業も明日からはじまり、「オラ、ワクワクしてきた…」というか、「ここからが本当の地獄だ…」というか。

金曜日に振り込まれるはずだった奨学金は会計課の処理の遅滞で月曜日まで入らないことになり、結局まだiPhoneは買えてません。もう我慢もそろそろ限界。

ここ10日間は“Fresher's week”と呼ばれる、新入生のためのイヴェントで盛りだくさんの期間でした。種々のミーティングや説明会の他には、ディナ、パーティ、シャンペンなど。

学部時代は僕はほぼ完璧な引きこもりだったわけですが、こちらにきてからは驚くほど人付き合いをしています。大規模総合大学のリソースと親密なコミュニティの共存を可能にするコレッジ制のなせる業でしょうか。人も、場所も、歴史も、マートンは本当に素晴らしい寮です。

明日の夜は初めての正餐で、スーツにガウンを着て食事します。火曜日の夜は「High Table」と呼ばれる、食堂の中でも一段高いところで、偉い人達とゲストと一緒に食事します。iPhoneが明日手に入れば写真もお見せすることができるでしょう。

* * *

今日は午後からマートン・コレッジの歴史見学ツアーに参加してきました。1264年に創立したマートン・コレッジ。13世紀の建築はまだ随所に残っています。

ツアーのハイライトはなんと行っても“Mob Library”と呼ばれる
図書室と、教会でした。教会は先週の木曜日シャンペン・レセプションがあった時に初めて入りました。T字型(十字架の上の部分が欠けている)で天井が非常に高く、美しい建築です。教会に関してはまた今度詳しく。

“Mob Library”はやはり13世紀末に設立されたもので、連続的に機能している図書室としては世界最古のものです。歴史的価値のある2階部分は許可無しでは入れないようになっていますが、蔵書は一応オンライン・カタログにも載っていて、閲覧も可能らしいです。

2階に上ると左手に頑丈な鍵の三つついた大きなチェストが置いてあります。図書館ができる前は、これがカレッジの蔵書を保管しておく箱だったとのこと。当時書物は非常に貴重なものだったので、三つの鍵のついた箱に保存し、閲覧時には鍵を持っている管理者三人をそろえなければいけなかったわけです。

蔵書を書棚にいれて並べるという方式をイギリスで最初に採用したのもこの図書室でした。現代的な図書館と言う概念がヨーロッパから輸入され、ここからイギリス中の大学に広まったということです。一番古い蔵書は九世紀のものだそうです。本の他にも地球儀や航海に使う道具、石盤、胸像、ステンドグラスなどが見物。

書棚は今風にいうと大学生用のセクションとリベラル・アーツのセクションに別れていて、大学生用のセクションには医学、神学、法学の蔵書が収められています。医学の本の一部は鎖で棚に留められていましたが、昔はすべての本がこのように留められていて、書棚のすぐ前の机でのみ閲覧が可能になっていたそうです。そのため、最も重要と考えられていた神学の書棚は南西側の窓の近くに設けられており、夕方一番遅くまで文字が読めるようになっています。

リベラル・アーツのセクションの床のオーク材は13世紀のものがそのまま残っていて、「ハイヒールでは立ち入らないで下さい」との注意書きが。書棚と書棚の間の通路はもっと歴史が浅いタイル張りになっていて、オーク材のところより一段高くなっています。

スコラ学の偉大な哲学者ドゥンス・スコトゥスはマートンに在籍していたのですが、このセクションにはスコトゥスのお化けが今でも徘徊しているらしいです。タイルが敷き詰められている部分ではスコトゥスの足は見えないらしい…

とにかく、オックスフォードにお越しの際には、是非ツアーを申し込んで、この図書室をご覧になることをお勧めします。

* * *

ところで今週から来週にかけてオックスフォードでは毎年恒例の歌曲祭(Lieder Festival)が開催中で、今週末は「シューベルト・ウィークエンド」でした。そこで僕も昨日の夜『冬の旅』をFlorian BoeschのバリトンとAndrew Westのピアノで聴いてきました。

サミュエル・ベケットもお気に入りだったという『冬の旅』のもっとも興味深い要素は、死を目前にした作曲家の「不条理なおどけ」あるいは「self-irony」にあると感じているのですが、昨晩の演奏はロマンティックど真ん中といった感じでした。それでも一曲一曲素晴らしい音楽で、劇的な感動を覚えました。でも、やはりモダンピアノだったので、低音域の和音がどうしても濁って聞こえてしまいました。

コンサート会場のHolywell Music Roomは、コンサート専用に造られた建物としてはヨーロッパで一番古いものとされていて、ヘンデルなんかもここで演奏したそうです。小さな教会から飾りを取り除いたようなこぢんまりとした簡素な室内楽演奏会場で、シューベルトにはとてもあっていると感じました。

* * *

ここ数日は信じられないほどよい天気で、尖塔以外に高い建物のまったくないオックスフォードの街を自転車で走ると、冷たい風が心地よく顔に当たり、頭上には広大な青い空が広がります。

posted by Yuuki at 06:38 | Comment(3) | TrackBack(0) | Journal/Gibberish
Comments to this post
なんかすごいところにいるんだねー。
写真をupしてくれるのを楽しみにしています。。
Posted by natsu at 10/13/2008 20:36
驚くほど人付き合いをしてるって良い事ですよ♪
ブログ読んでると
なんかハリーポッターの世界ですね

Posted by 馨 at 10/14/2008 05:42
>natsu
いろんな意味ですごいです、この街は。遊びに来なよ!笑

写真、iPhoneで結構撮ってるんだけどどうUploadしているかまだ決めかねてます。しばしお待ちを。

>馨
これからは忙しくなる一方だと思いますが、引き蘢らないよう頑張ります。

ハリポタの映画の食堂と階段のシーンはうちの隣の隣のクライスト・チャーチというコレッジで撮影されてます。
Posted by Yuuki at 10/18/2008 11:00
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