10/23/2008

大井浩明ベートーヴェンツィクルス(第二期=第六回〜第十回公演)

ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲とリスト編交響曲全9曲を作曲年代ごとに8台のフォルテピアノで弾きわける、大井浩明さんによるベートーヴェンツィクルスの第二期が今月末の第6回公演で始まります。お知らせをメールでいただいたので以下に引用します。

4月・7月に引き続き、京都文化博物館ホールにてベートーヴェン・ソナタならびに交響曲(独奏版)を、時代順・様式別のフォルテピアノ8種類で弾き分けるツィクルス、その中期ぶん(第6回〜第10回)について御案内申し上げます。プログラム詳細等、最新情報については拙ブログ・サイト(http://ooipiano.exblog.jp/8588108/)を御覧下さいませ。

ニックネーム付の有名作品だけを挙げても、ソナタですと、《テンペスト》、《ワルトシュタイン》、《熱情》、《テレーゼ》、《かっこう》、《告別》、交響曲ですと《英雄》、《運命》、《田園》、それに《コリオラン》と、中期傑作が目白押しです。

初期(第1回〜第5回)では、管弦楽作品を含めて、アンドレアス・シュタイン、アントン・ワルター、それにヨハン・バプティスト・シュトライヒャーといった、ウィーン製のフォルテピアノのみを使用致しました。このたびのツィクルスでは、中期以降のベートーヴェンに大きな霊感を与えたとされる、イギリス式フォルテピアノにスポットライトを当てることに致しました。特に「5オクターヴ半」の「イギリス式」フォルテピアノによる演奏は非常に珍しい試みと目され、初期と後期のギャップを結ぶミッシング・リンクとなることでしょう。

英国は、南ドイツ・ウィーンと並んで最初にピアノ文化が花開いた地域でした。1760年代初頭のヨハン・クリスティアン・バッハ渡英、そして産業革命の開始と期を同じくして、同地ではピアノフォルテの開発競争が活発となりました。特にA.バッカースが開発したエスケープメント付きアクション、いわゆる「イギリス式グランドアクション」は、、20世紀初頭まで100年以上にわたって愛用されることになります。群雄割拠状態を経て、1790年代にはブロードウッド工房によるグランドピアノが仕様として標準化され、各工房からはほとんど見かけも性能も変わらないピアノが生産されるようになりました。1800年頃の仕様は、5オクターブ半の音域、バッカースのアクションと一音あたり3本の弦、ダンパーペダルとウナコルダペダル、というものです。今回のコンサートで使用されるジョーンズ・ラウンドもそうしたピアノの一つです。
初期ツィクルスではレプリカを使用致しましたが、今回は200年前に製作され、そして恐らくこの100年間は触れられていなかったオリジナル楽器そのものを、山本宣夫氏の修復により、初御披露目させて頂くこととなりました。

グランドピアノ型に比べると、横長テーブル型のスクエアピアノの標準化はより穏やかでした。ロンドン最大の総合音楽商社であったロングマン&ブロドリップ社が新技術を積極的に取り入れたスクエアピアノを発売し支持されたのち、1800年頃に各工房でヨハン・ガイブ開発のエスケープメントアクション、ウィリアム・サウスウェル開発のダンパー、5オクターブ半の音域とダンパーペダル、という仕様にほぼ標準化されていきました。ロングマン&ブロドリップ社は1798年破産、大ピアニストで作曲家のムツィオ・クレメンティが経営に乗り出し、クレメンティ社として独自の工房でピアノの生産を始めます。今回のコンサートで使用される、フォルテピアノ・ヤマモトコレクション所蔵のスクエアピアノは、クレメンティ社初期のものです。

初期に引き続き、ベートーヴェンと「同い齢」である、清水一徹ならびに鈴木純明の御両名に、5オクターヴ半・イギリス式フォルテピアノのための新作をお願い致しました。7月の鈴木光介同様、プログラム全体の枠組みを考慮した作品を書いて頂いております。乞う御期待です。
なお、中期ぶんチラシ(http://ooipiano.exblog.jp/9795465/)の表面のモチーフは、ベートーヴェン(1770〜1827)とほぼ同時期に活躍した、古今未曾有の最強力士、雷電爲右エ門(1767-1825)です。手前の対戦相手、花頂山こと市野上浅右エ門(1767-1802)は、史上、雷電に「2回」勝ったことのある唯一の力士です。差し向き、ゼロ年代の東西ヒーロー(英雄)、というわけです。
同時に、コンサートでの録音を元にパッチ修正を加えたライヴ盤が、Opus55レーベル/キング・インターナショナルより、順次リリース(http://www.hmv.co.jp/product/detail/2799320) される運びとなりました。全17枚の予定です。

11月7日には、北白川の京都造形芸術大学・春秋座ホールで、シュトックハウゼン最晩年の大作、ピアノ独奏のための《自然の持続時間》(全24曲で約150分)のうち、最後の来日時に京都で作曲された第5〜第7曲、ならびに全曲の総括的回顧が行われる最終第24曲(約20分)の日本初演(http://ooipiano.exblog.jp/9919761/)を行います。プロデュースは、日本版「古楽」ムーヴメントを推進してこられた木戸敏郎氏で、雅楽器によるシュトックハウゼン《歴年》の再演のほか、復古楽器のための委嘱新作も初演されます。

皆様の御来駕を心よりお待ち申し上げております。

ベートーヴェンの中期作品を形容する表現として「傑作の森」というのがありますが、穏やかに葉揺れ木漏れ日注ぐ森…というよりは雷鳴が轟き高波の荒れ狂う大嵐の中の大航海といったイメージのほうがあっているのではないかと思います。モダンピアノがタイタニックだとしたら、フォルテピアノは小舟のようなものでしょうか。しかしベートーヴェンの想像力はスペースシャトルレヴェルにぶっ飛んでいたというべきでしょう。

第二期5公演のチラシは氏のブログのこの記事でみれます。第6回公演《いと麗しき新世界(とつくに)かな》に関しては同ブログのこの記事をお読み下さい。

このベートーヴェンフリースの演奏は順次音源化される予定です。このうち最初の2枚は10月21日に発売されました。(HMVのページはこちら)。

僕自身京都まで足を運ぶことができないのはとても残念です(ワルトシュタイン聴きたかった…)が、せめて宣伝だけでもさせて頂きます。

posted by Yuuki at 08:23 | Comment(0) | TrackBack(0) | On Art
Comments to this post
Post a comment
Name: [required]

Email:

Web:

Comment: [required]

Code: [required]


*画像の中の文字を半角で入力してください。
*Please enter the word in the image.


“Preview”で確認後、“Submit”で投稿して下さい。
TrackBack URL for this post
http://blog.seesaa.jp/tb/108477577

Trackbacks to this post
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。