02/21/2006

ダーウィンの武勇伝

『現代思想の起源』(Origins of Contemporary Thought = OCT)というクラスで、ダーウィン、ニーチェ、フロイト、ハイデッガーについて勉強するんだ、という話を友達にしたら、「頭がイッちゃってるってことしか共通項がないな」と苦笑いで言われてしまいました(笑)。

ニーチェが晩年イッちゃったのは有名ですが、実際勉強してみるとダーウィンもいろんな意味でかなりやばい人だったということがわかりました。

「やばい」ってもちろん「すごい、素晴らしい」って意味でもあって。例えば、『種の起原』の原書を読む人はもうあんまりいないんだろうけど、資料の量がとんでもない。僕は大量のデータを採取して帰納的に考える方法論とほとんど縁がないから余計そうだけど、あぁこれが自然科学者というものなのか、と驚嘆させられます。しかもことあるごとに「私はこのことを証明するのに充分な観察データを集めましたがスペースがないのでここには書きません」っていうような言い訳が出てきて。実際のフィールドワークとそのデータのまとめにかかった時間を思うと…

まあでもそんなことは科学者としては特別に珍しくもなくて、歴史的に見ればティコ・ブラーエ(Tycho Brahe)とかもすごいんだろうし。でもダーウィンの晩年の一日の仕事スケジュールはホントに結構驚きです。以下は歴史に名高い1911年版の大英百科事典(Encyclopædia Britannica)から、「ダーウィン」のエントリの抜粋(翻訳は僕):
(ダーウィンは)朝早く起きると、7:45に一人で朝食を食べる前に短い散歩をして、朝食後すぐに仕事に取りかかった。これは、朝8:00から9:30までの一時間半を仕事に最も適した時間と考えていたからである。その後手紙を読み、(妻が)本を音読するのを聞くと、また10:30に仕事に戻る。そして、12:00または12:15頃には一日の仕事を概ね終わりとし、天気に関わらず散歩をした。[...] 昼食後に新聞を読み、何通か手紙を書く。3:00になると休憩し、1時間ほど煙草をくゆらしながら妻の音読に耳を傾ける(そのままうたた寝することもしばしばあった)。そしてまた短い散歩に出かけ、4:30頃帰宅すると、その後1時間ほどまた働く。その後はまた妻の音読を聞き、煙草を吸いながら7:30の軽いティータイム(彼は遅めの夕食よりもこれを好んだ)まで休憩。そしてバッグギャモンを2ゲーム遊び、軽い読書をして音楽と妻による音読を少し聞くと、大抵は疲れて10:30には床に着いた。[...]
……え。ダーウィンさん、一日実働4時間っすか…? いや、働かなすぎだろっ(あと奥さんに本読ませ過ぎ)! しかしこのスケジュールであれだけ書けるんだから、相当効率が良かったんでしょうねぇ。

でももっとすごいのは青年時代のダーウィンね。以下は彼の自伝からの抜粋(僕の訳です)。大学では神学を学ぶスポーツマンだったってことからして結構驚きだけど。
ケンブリッジで学んでいた頃、カブトムシ採集よりも私を魅了し、喜びを与えてくれたものはありませんでした。採集することそのものに私は燃えていたのです。採集した個体を解剖したりはしませんでしたし、名前を調べること以外に図鑑を開いて特徴を比べたりすることもありませんでした。私の入れ込み度合いを証明してみせましょう。ある日、古くなった木の幹を剥がして見た時、非常に貴重なカブトムシを二匹発見したので、私はそれらを両手に一匹ずつ捕獲しました。しかしその後すぐもう一匹また別のレアな種類のカブトムシがあらわれたので、これは絶対に逃すわけにはいかない、と思った私は、とっさに右手に持っていたカブトムシを口の中に放り込んだのです。ああ!するとそいつはなにか強烈に苦い汁を私の口の中で放出し、舌をやられてしまった私はすぐそれを吐き出してしまい、結局三匹目も逃してしまったのでした…
……うわぁ……ダーウィンさん、これはネタだと言ってくれ…。いやこれはかなり強烈っしょ。その辺の武勇伝よりずっとおもしろいじゃん(笑)。しかも左手に持っていた2匹目はちゃんと確保してるっぽいとこに注目。この執念が後に進化論を生み出すのです…。

ま、こういうエピソードを知る機会があるってのも、歴史の授業のおもしろいところで。哲学のクラスでは哲学者の人生なんてあんまり関係ないし。それにつけても、何時の時代も天才となんやらは紙一重と言いますが本当ですね…。

Current music: Dichterliebe op.48 12: Am Leuchtenden Sommermorgen (Schumann), by Ian Bostridge (tenor)/Julius Drake (pf.)


posted by Yuuki at 08:15 | Comment(2) | TrackBack(0) | Uncategorized
Comments to this post
ケンブリッジで学んでいた頃、カブトムシ採集よりも私を魅了し、喜びを与えてくれたものはありませんでした。採集することそのものに私は燃えていたのです。
ここがかっこいいねぇ〜!!なんか、やっぱり凄い人間って変わり者だね(^^)
Posted by Kiyo at 02/22/2006 01:05
>Kiyo
だよねぇ。ダーウィンの人生を映画化するときは、このエピソードは是非入れてほしいな。
Posted by Yuuki at 02/23/2006 17:36
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