08/18/2006

孤独について考える、少しだけ孤独に

人は独りでは生きていけない」とよく言うけど、それは本当か。本当ならどうしてそうなのか。

それから、「人は誰も独りじゃない」ともよく言われる(結構無責任な発言だと思うけど)。もしこれが本当なら、論理的に言えば本当に孤独な人はいなくなるわけで、最初の「人は独りでは生きていけない」ことを証明するのが難しくなる。この2つの命題が矛盾しているわけではないけれど。

いやいや、話を難しくして焦点をぼかしちゃいけない。単純な気持ちをあらわすことから始めよう。「僕はいっつも独りぼっちなのは嫌だ。家族や友達、恋人と一緒がいい」。でもこれはどうしてだろう?

そもそも「独りで生きる」って一体どういうことか。ロビンソン・クルーソーのように、自分の家を自分でつくり、羊や牛を飼って肉やバターをつくり、果物をとって生活することか。つまり、物質的に他人に頼らないということか。

衣食住を自分自身で補うことは、環境と能力次第では可能なことだ。現代ではもちろんこれは非常に難しいけど、論理的に不可能なことじゃない。ではやっぱり人によっては「独りで生きていくこと」ができるのか?

なんか違う気がする。ひとりぼっちが寂しいのは、家や食べ物や服を供給してくれる他人がいないからじゃない。物質的に満ち足りていても、つまり、たとえ誰かになにかを具体的にしてもらう必要がなくても、なぜか誰かがそばにいてほしくなる。ように思える。

すごく当たり前のことを書いているけど。

天賦の才を持つ芸術家は孤独だという。他の人に理解されないということだ。芸術家は生きているか? それとも作品が理解されたとき、ようやく芸術家は生まれるのか? 「ある人々は死後に誕生するのである」とニーチェが(特にキルケゴールを指して)書いている。

つまり、「生きる」ということはただ単に「心臓が動いて脳が活動している」ということではないってことだ。

* * *

ところで、ビートルズの全作品の中で僕が一番好きなのは「Strawberry Fields Forever」というジョンの曲なんだけど。

「Strawberry Fields」ってのはジョンが子どものころに遊んだ孤児院の庭のような場所で、この曲の冒頭で彼はノスタルジックに「夢のように何にもとらわれなくていい、あのストロベリーフィールズに一緒に行かないか」と誘う。

なのにBメロではジョンは気怠い声で誰も彼を理解できやしないこと、そしてそれがそれほど憂うべきことでもないこと、そうやって生きていくことは大してつらいことでもないということを歌う。

高校生くらいの時僕はこの曲を考える度に「ああ僕はジョンのようには強くないなぁ…」と思って何故かひどく悲しい気分になったものだった。人に理解されなくてもいい、慕ってくれるひとがいなくてもいい、そんな風に思えることって、本当にあるだろうか、と思った。ジョンはこんなことを言っている割にはヨーコと一緒に平和を謳歌して反戦活動なんてやってるから、矛盾してるじゃないか、とも思った。

おもしろそうな問いは、つまりこれかも。人は独りきりでなにかをつくりだすことができるか? 「独りでは生きられない」というのはひょっとして、この問いに対する答えがネガティブであることをみんな直感的に知っているからではないか?

これこそがニーチェが直面した最大の問題だ。「孤独」の経験を語ると言う行為は既にそれ自体矛盾している。だって、何かについて語るというのは「孤独」を否定しようとする試みじゃない?

ニーチェが孤独に完全に打ち勝った「超人」ならば、どうしてあれほどまでに饒舌に自分の考えを表現する必要があったのか。沈黙の中にだけ、真の孤独があるというのに。『ツァラトゥストラはかく語りき』と言う本を彼は書いたけど、本当の問題は「何故ツァラトゥストラはかく語ったのか」だと思うんだなぁ。

「なにかをつくりだす」というのは、粘土から茶碗をつくるとか、木材から家をつくるとかそういうことじゃなくて。「価値を創る」ということだ。そうすると、上に挙げた問いは次のように変換できる。人は独りきりで価値をつくりだすことができるか? このあたりでニーチェとマルクスがつながってくるように感じる。

僕は生きているか? 君は? 「生きる」ということが実はまぎれもなく「生かされる」ことであったとしたら…?


posted by Yuuki at 16:58 | Comment(0) | TrackBack(0) | On Aesthetics
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