ついに「生まれ変わる」という内容の遺書を残して自殺した中学生がニュースになった。「大人」はもちろん、いろいろなことを言ってこの不幸な子どもを批判する。例えば、次のように。
死ぬのは勝手だけれど、生まれ変わるなどという甘ったれたことを言うな。そもそも「人は生まれ変われる」なんてどうして信じるのか。馬鹿馬鹿しい。そうだ、「生まれ変わり」を題材にしたテレビや漫画が原因だ。「生まれ変わり」なんてものに期待しないで、一度しかない人生を一生懸命に生きるのが大切なのだ。人生とは苦しいものだ。そこから逃げ出してはならない。あなたを生んだ親のことをどう思っているのか。あなたはこの人生でだけ、あなたの親の子どもではないか。「生まれ変わろう」などと考えることは許されない…
「大人」は自分たちが「子ども」よりも我慢強く、長く人生を生きていると考えているから、「自殺」に対して食傷気味なのだ。感情的になるのはかまわないけど、何が失われているかといえば、「命の大切さ」ということの大切さ、だと思う。「大人」は自分たちが「子ども」より頭が良くて、常識を知っていると考えている。だから、さらに次のように言って「生まれ変わろう」として死んだ「子ども」を批判する。
仮に生まれ変わったとしても、人生は同じように苦しいものだ。自殺して人生をリセットできるなどという考えは甘えだ。苦しくても自分の人生から逃げ出してはいけないのだ(私は私の人生から逃げ出さなかった)。仮に生まれ変わったとしても、それで幸せになれるなどと誰が保証できるのか。この人生よりもずっと不幸な環境のもとに生まれ変わるかもしれない。今の人生がどれだけ幸せなものかわかるだろう。人間ではなく、他の動物や植物に生まれ変わってしまうかもしれない。とにかく、「生まれ変わる」というのは馬鹿げた話だ。「生まれ変わる」などと考えてはいけない。「自殺」なんて考えてはいけない…
そういうことじゃないだろう、と思う。「生まれ変わる」と言って自殺する子どもの問題は、「生まれ変わり」が「成功」する現実的(形而上学的)可能性が限り無く低いことにあるのではない。「仮に生まれ変わったとしても…」という物言いは核心を突いていない。
では「生まれ変わる」と言って自殺する子どもの問題は一体何か。それは言うまでもなく、「想像力の欠落」である。「生まれ変わり」という概念を知って、それを実現するために建物から飛び降りて物理的に体を破壊したのだ。なんという想像力のない考え方だろう。この点においてこの子どもは圧倒的に不幸だ。そして「大人」はこの子どもを見て、「生まれ変わりなんてものがたとえあったとしても…」という。なんという想像力のない考え方だろう。「大人」は往々にして不幸なものだ。
「生まれ変わろう」として自殺することは、空を見上げて「これは空です」としか言えないのと同じことだ。どうして今の自分の体で、今の自分の命で「生まれ変わろう」とは思わないのか? 「生まれ変わる」のにどうして「死」が必要であると考えてしまうのか? これは言葉と想像力の問題だ。
ヨハネによる福音書(第3章)の中に僕の好きなエピソードの一つがある。ファリサイ派のニコデモ(Nicodemus)という男がイエスに向かってこう言う。「先生、私はあなたがおこなわれるしるし(=奇跡)から、あなたが神とともにおられることを知っています。」するとイエスはニコデモにこう答える。「あなたに真実を話そう。何人も、生まれ変わらなければ、神の国を見ることはできない。」
これに対してニコデモは次のように答えるのである。「一度年をとってしまったものがどうして生まれ変わることができましょう? まさか、もう一度母親の胎に戻って、またでてくることなんてできないでしょうに!」まさにこの時ニコデモは「大人」のように「生まれ変わり」を想像力を持たずに理解しようとしていたのだ。きっと彼は「大人」のようなわかったような顔をしてイエスと話していただろう。イエスがこの後「何人も水と精霊によって生まれ変わらなければいけない」のであると説明しても、ニコデモにはこれが理解できなかった。「どうしてそんなことがありえましょう?」(John 3:9)
(ところで聖書を引用すると僕が宗教的な偏見を持って喋っていると思う「大人」がたくさんいるだろうけれど、それこそまさに偏見であり、想像力のないことだ。)
言葉は言葉以上のものだ。そうでなければ、僕たちは生きていない。デリダは例えばこう言っている。「私が言うことを、まるで奇跡を信じるように信じてください。」
12/09/2006
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いじめと自殺に関するメモランダム(1)
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いじめと自殺に関するメモランダム(2)
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「生まれ変わる」って事にも批判しているみたいだけど前世を覚えてる人なんてあんまいないんだし、もしかしたらもっと幸せになれるかもしれないんだから批判したって意味無い事でしょ。もっと生きて居たくなる様な事を伝えてくれって思うね。
一人の人が死んで悔しい話なのに馬鹿げた話にしている所がイヤだわぁ。
そうだね。「一人の人が死んで悔しい話」ってのは本当にまったくその通りだと思う。自殺は悲しいことだし、それが止められなかったのは悔しいことだよ。
そもそも「誰にでも苦しいことはあるのだから…」とか「私にもつらい気持ちはわかるけど…」とか言うのは横暴だと思うんだよね。これは自殺の問題だけじゃないけどさ。だって“この”苦しさを“今”感じているのはその人だけであって、その痛みは他の人には絶対理解できないことだから。この「わかりあえなさ」を感じた上で何が出来るか、何をするべきかが大切だと思うんだけど。
それを考えると「馬鹿馬鹿しい」とか「甘ったれるな」とか言って一蹴してしまうことなんてできないと思うんだけどね…。
失礼します。
Googleにて拝見
「イジメ撲滅」のご案内
ご笑覧ください。
http://www4.ocn.ne.jp/~kokoro/