現代倫理のクラス(CE)で「汚れた手」の問題というのを勉強したのですが、それと関連してG. E. M. Anscombeの“Mr. Truman's Degree”と、Thomas Nagelの“War and Massacre”という論文を読みました。この二本はなかなか素晴らしかったです。
前者は、1956年、オックスフォード大学が、広島・長崎への原爆投下を指示したアメリカのトルーマン大統領に名誉学位を与える計画を発表した時に、当時オックスフォードで研究員だったAnscombeがこれに激しく反対して書いたもの。一方、後者は、ヴェトナム戦争が泥沼化した1972年にNagelが書いたもの。
何が良いっていうと、「熱さ」です。内容はさておいて、パッション。倫理哲学者としての任務感、またそれ以上に倫理的に生きることへの厳しい自覚のようなものがひしひし伝わってきました。道徳について深く考えて、自分の結論を心から信じるってことです…。
Anscombeの論文は厳しい体制批判が含蓄されているので、どこの出版社も印刷に消極的でした。結局彼女は論文をパンフレットとして自費出版し、自らキャンパスでそれを配ったそうです。熱いなぁ、カッコ良いなぁ、と思うわけです。
この二人の主張は、単純に「戦争はいけない」ということではなくて、たとえ戦争においても、単なる功利主義的な計算を越えた道徳のルールがある、ということです。具体的には、戦争中、直接的に無害な市民の命を奪うことは許されない殺人であるということです。
そして僕はただこの二本の論文の熱情に感心したといっているだけで、特に戦争や殺人に関して意見を述べてるわけではないです。「戦争は是か非か」とか「(いかなる場合においても)人を殺してはいけないか」とかいった問いに対する僕の答えは一律して「わかりません」です。
だから、僕はただ、戦争や殺人にはできるだけ関わらないでいたいだけです。これが僕が(ある意味で)倫理にまったく興味がない理由の一つです。僕はAnscombeやNagelと違って「なまぬるい」人間なのです。
03/24/2007
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