日本語版ウィキペディアの「オックスフォード大学」の項目では、次のような説明がなされています。
カレッジは、「学寮」とも訳され、日本の短期大学や単科大学が英語表記でcollegeと称する場合とは異なる。アメリカ合衆国のカレッジ制度とも異なる。教師と学生が寝食を共にし、同じ建物に住み、またそこで共に学ぶという独特のシステムである。ハリー・ポッターシリーズで、ホグワーツ(学校)はグリフィンドールやレイヴンクローなど、それぞれ特色のある4つ寮からなりたっていますが、オックスフォードも基本的にはそれと同様です。カレッジは、学部生、院生、フェロー(研究者)、教師が一緒に暮らし、学び、一つの共同体が構成される場所です。
よって、どのカレッジに所属するか、ということはオックスフォードで暮らすにあたって大変に重要な問題です。カレッジによって特別に強い学術分野があったり、伝統があったり、学部生/院生、男女の比率も異なるなど、ヴァラエティにとんでいます。
(カレッジの全般的な雰囲気も重要です。先週ノートルダム大を見学した時にホストをしてくれたV氏はオックスフォードで二つ目の学士号を取得したのですが、彼の所属していたベリオール・カレッジでは、彼のいた2年間で2つの自殺者がでたそうです。なんでもベリオールではここ20年間で20人近い自殺者がいたとか。頭の良くて繊細な人は傷つきやすいものですが、それにしても少し多すぎます。
僕はベリオールを特別に批判しているわけではありません。ベリオールは所属学生の政治的関心が強いことで有名で、何人かの英国首相も輩出しており、入寮希望者数では一番人気なのです。僕の言いたいのは、大学や大学院で学ぶというのは時に厳しく、とてもストレスの溜まることであるということ、そして、お互いを高めあう切磋琢磨と、お互いを蹴落とす競争とは紙一重だということです。)
さて、受験者は出願時に希望のカレッジを指定するのですが、僕はその際、奨学金をもらえるチャンスが一番大きそうなカレッジを選んだのでした。(伝統だの施設の新しさだの、贅沢なことを考えている余地はありませんでした。)
結果、前ポストでもご報告した通り、僕は、マートン・カレッジが提供するRipplewood Scholarshipという奨学金をClarendon Fund Scholarshipと連結でいただく運びになりました。つまり、僕はマートン・カレッジに所属することになります。
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マートン・カレッジの偉大なる歴史を少しだけ紹介します。「偉大なる」なんていうと仰々しいですが、本当に、ほとんど笑ってしまうくらいすごい歴史がこのカレッジにはあります。
まず創立年。オックスフォード大学そのものがいつできたかは正確にはわかっていないらしい(!)のですが、マートン・カレッジの創立は1264年です。僕の通った小学校は明治23年(1890年)創立で結構古く、ヴァージニア州立大学は1819年創立で、アメリカ史上では非常に古いのですが、マートンとは比較になりません。
事実、マートンはオックスフォード大学で最も古いカレッジの一つです(どのカレッジが一番古いかは諸説ある)。とにかく、750年近くの伝統を誇るカレッジです。日本の鎌倉時代からあったってことですから…。
その長い歴史の中で、マートン・カレッジは多くの著名人を輩出してきました。その一部をあげると、
- ウィリアム・ハーヴェー(William Harvey, 1578-1657):血液が心臓から動脈へ送り出され、静脈を通じて戻って循環するということを発見した人。
- J・R・R・トールキン(J. R. R. Tolkien, 1892-1973):言わずと知れた『ホビットの冒険』、『指輪物語』の作者。
- T・S・エリオット(T. S. Eliot, 1903-1969):『荒地』、『四つの四重奏曲』などで知られる現代英米詩の巨人。ノーベル文学賞。
- テオドール・アドルノ(Theodor Adorno, 1903-1969):フランクフルト学派の哲学者、社会学者、音楽評論家。『否定弁証法』、『プリズメン』、『新音楽の哲学』など。
- アンドリュー・ワイルズ(Andrew Wiles, b.1953):数学者。フェルマーの最終定理を証明した人。現プリンストン大学教授。
(それで、最近のオックスフォード関連のポストのタイトルは、エリオットの詩から取っていたのでした。)
マートンにはこれまた非常に古いチャペルがあって、有名なコーラス隊もあり、学生の練習用のピアノも数台あるらしいのですが、ひょっとしたらアドルノが触ったピアノがまだあるかもしれない、なんて考えてます。
しかし、日本人にとってこれらの著名人にもまして驚くべきなのは、あの徳仁親王、つまり今の皇太子殿下がマートンに留学していたということでしょう。テムズ川の水運について2年間研究した、とのことです。詳細は不明ですが、思うに、マートンが提供する日本人向けの奨学金であるRipplewood Scholarshipは、ひょっとするとこの辺の関連で設立されたのかもしれません…。
カレッジに関しては、引き続きおもしろいことがあれば随時報告したいと思っています。
太田先輩っぽい、らしい、素晴らしい、道だと思いました!
また日本に帰ってくるときは教えてくださいね。
名声と伝統に感服してしまうのは僕らしいと思うね、自分で言うのもなんだけど…。
今年は5月19日に帰国予定であります。